日記

低クオリティの弁当、本の感想、ときどきDA PUMPについて

二人目妊娠の話(どこで出産するか)

二人目の産休に入り、妊娠中の話を書いておこうという気力が湧いてきたので、つれづれと記録していこうと思う。まず出産する場所の話。

 

一人目は自宅から3kmほど離れた場所にある区内の総合病院に、妊婦検診の初診から出産までお世話になった。いくつか理由はあるが、とにかく医療の体制が充実したところで産みたい気持ちが強かった(といいつつ、NICU=新生児向けの集中治療室はなかったけれど)。施設が新しくてきれいだったことも判断の手助けになった。今思えば「コウノドリ」の影響なんかもあったと思うが、総合病院じゃない場所で出産するのは心細く感じた。

 

今回は総合病院ではなく、初産で「怖い」「無理」と思っていた産婦人科の病院を選択した。

 

それには前回のときの後悔があり、病院を変えただけでそれがすべて払拭されるとは思わないが、それでも「出産のなんたるかを一応わかっている者」として、同じ目に遭うことをなるべく避けたい気持ちがあるわけである。

 

一言でいえば、もうスパルタ合宿に行きたくない。

 

詳しいことは過去に書いたが、一回目の総合病院は、運営母体である公共機関の気風を継いでいるからなのか、とにかく質実剛健な雰囲気だった。無痛分娩の選択肢がないのは当然として(それは気にしていなかった)、帝王切開のような医療介入もなるべく避け、とにかく妊婦本人が自力で出産することが推奨されていた。もちろん、赤ちゃんの栄養は母乳で与えるべきだという方針だった。

 

しかし、「両親学級」的なもので配られたテキストに「産後のお母さんは授乳と旦那さんのお世話以外のことはせず休みましょう」と書いてあって「おいおいいつの時代だよ(笑)」と思った以外、特に違和感とか不満はなかった。入院するまでは。

 

出産したその日、病室に家族が見舞いに来て、大量の甘いものをつまんでワイワイやっていたところにやってきた助産師さんがカーテンをシャっと開けて入ってきて「母乳のために明日からはそういうものは食べないでくださいねー!」と言ったところから、入院の性格というのか、輪郭がはっきりしてきた。母体を休めるのではなく、授乳を軌道に乗せることが一番大切であるという、そういう場所に私は来てしまったようだった。

 

翌日、部屋に赤ちゃんを連れて来られて以降、基本的に「赤ちゃんにミルク(人工乳)を飲ませる」という選択肢はなかった。泣いたら、母乳が出なくても授乳する。そしたらそのうち出るようになるから。夜中も同様。連続して眠れて2時間とか。シャワーの時間以外、ずっと赤ちゃんと一緒。それを4〜5日。そういう生活を強いられた。

 

晴れて大学受験を終えて飲食店でアルバイトを始めてみたら、たたき上げの社員からのあたりがきつかった、というご経験がある方はいないでしょうか。勉強ばかりしてきて世間の大事なことをわかっていない奴、本当の根性を知らない奴だと思われている、そんな感覚を覚えた方、いるのではないでしょうか。

 

入院生活をこの飲食バイトだとすると、社員は助産師さんだ。なんだか入院中、そういう数々の記憶がよみがえってきて、「社員」に嫌われたらやりづらいぞ、という頭になってしまった(これは私の性格の問題ですが)。

 

そんな病院の方向性が、産後の育児にも尾を引くこととなった。

 

実は退院して数日後に大きく体調を崩して受診しに行ったのだが、治療のため一泊の入院を勧める医師と、それによって授乳がストップされることを危惧する助産師とのあいだで意見が割れ、結局入院させてもらえず家に帰されたことがあった(うらみつらみが多すぎてすべて書いたら1,000文字くらいになったので割愛しますが)。あれは本当につらかった。仮にまた同じことが起きたら死ぬ気がするのだが、治療してもらえることはないのかもしれないと思った。そうなると、なんだか価値観が転倒してきて、「だとしても授乳は大切なんだな」と考えるようになってきてしまった。「死と隣り合わせの状況で授乳に力を注ぐ」というマインドセットでの育児が始まった。

 

おかげさまで授乳関連での大きなトラブルはなかった。でも子どもがほ乳瓶を受け付けなくなってしまい、私が自由にできる時間は「満腹になった子どもがおなかをすかせるまで」のよくて2時間半程度で、どんなに体調が悪かろうが、眠かろうが、自分以外の誰も対応がかなわないことを、自分でやるしかない期間がしばらく続いた(仕事とかしてると、そんな状況、属人性の高さがおそろしいと思うけど)。

 

今回、全体的にもうこういうのはこりごりだと思った。カギは病院の考え方であり、それは「産後に母親と子供を同じ部屋にするかしないか」に発現するはずだと推測し、「地名 母児別室」で検索して出てきた病院、それが現在出産する予定のクリニックだ。全室がホテルみたいな個室、産後の入院中はiPad支給、こだわりの食事、無痛分娩の取り扱いあり、検診中は4Dエコーあり、アメニティは国内の有名化粧品ブランド(それでいて以前の総合病院より分娩の代金が安いのはなんでだろう)。

 

先日、入院中の過ごし方や育児に関する希望を話す面談があった。初めてじゃないからだろうか、助産師さんを恐れるスタンスは卒業できていた(年下の方と思われたがタメ口だった、でも怖くなかった)。

 

「前回スパルタでつらかったから」「上の子がいるから」という枕詞をつけまくり(よく考えると後者は何の理由にもならないが)、「入院中は自分が休むことを最優先したい」と明記した紙を提出した。他には「赤ちゃんは基本的に新生児室で預かってほしい」「当然夜は寝たいため授乳はスキップしたい」「母乳だけで育てたくない」とも書いて、了承をとりつけた。

 

これだけで、全部解決するとは思っていないけど。人は往々にして後悔をバネに極端に考えや行動を変えてしまい、また後悔を生み出す生き物だとは承知しているけれど。でも今回はこれでいってみようと思っている。どうなるのかな、楽しみです。

※前回同じ病院で同じ日に生んだ同い年のお友達は、同じところで2人目を産んでいるので、まあ相性ってあるよねえということは付記しておきたい。